▼A社は完工高10億、40人規模の総合建設業
1年前の○月○日、A社のK社長から電話が入った。
「ホームページを見た。ISO9001の件で相談したい」とのこと。
約束の日に訪問すると、K社長と管理責任者のT部長がISOの資料を前に待っておられた。
私「どんなご相談でしょうか?」おもむろに切り出すと
K社長「ここにいるT部長がISOを継続するなら辞めると言っているんです」
T部長「ISOをやって何かメリットがあるんですか?」と私に問いかける。
私「そうですねえ、ISOを取得したけど重荷になっている企業は
多いですね。御社がISOに取り組まれた理由は何ですか?」
K社長「この地区でも主な会社は取ってしまったし、経審の点数も・・・。」
T部長「私は反対でした。ISOの会社はみんな苦労をしていたから」
K社長「他社も頑張っているんだから、3年間はとにかく頑張れと言っているのだが」
私「マニュアルを拝見できますか?」と見せていただくと、
・品質マニュアルは、規格の焼き写しで規格用語で書かれている。
・手順書が6冊
(文書管理、記録の管理、内部監査、不適合製品の管理、是正処置、予防処置)
・帳票集が5cmほどの厚さある。
私「何が一番問題ですか?」
T部長「マニュアルを読んでも何を書いてあるかよく分からないのです。コンサルタントの言うとおりやったのですが、作成書類が増えた上にハンコをつく欄が増えて業務が進まないのです。」
私「例えば?」
T部長「見積書は今まで急ぎの場合や社長が不在のときは私が決裁して提出していたのですが、ISO後は課長、私、常務、専務、社長のハンコがないと業務が進まないのです」
私「それはISOを契機に決済手順をそうすべきと判断されて、されたのでしょうか?」
T部長「いいえ、コンサルタントの先生が持ってきた見本がそうなっていたのです。コンサルタントもキチンと手順を踏むべきだという指導でした」
私「他には?」
T部長が上げた問題点を要約すると以下のとおりであった。
1.「施工計画書」と「施工品質計画書」を作成しているが、
「施工品質計画書」の作成意義が分からない。
2.小規模工事は「施工品質計画書」を作るのが大変なので、
ISOの適用範囲を300万円以上にしたいといったら、
ダメだといわれた。
3.ISOの導入後、検査の種類が増えた。
4.スチールテープやスタッフも管理が必要なのか。
「使用前点検記録」をつけるのが大変である。
5.設計図書の配付管理を「設計図書配付管理台帳」でやっている。
変更後とに、台帳の修正が必要だ。などなど。
私「結論から言うと、以上のことはすべて改善できます。
それに御社の規模ですと「品質マニュアル」一冊で十分です。
管理する「帳票」も今の3分の1でいいでしょう」と言うと、
K社長もT部長も、唖然とした様子でした。
結局、私の方から、半日3回のコンサルで実際業務に合った「マニュアル」に全面的に改定しすることを提案し、改善に着手した。
今では、何の支障もなくISOを継続している。
むしろ、社長の言葉をまとめると、次のような効果が出てきているという。
1.中途採用社員への業務説明が「マニュアル」で効率的に
できるようになった。
2.目標管理への意識が高まり、P-D-C-Aの仕事の基本が理解されてきた。
3.500万円以上の工事について「工事評価」をするようになり、
現場代理人の品質意識と競争意識が高まった。
4.教育訓練や資格取得が計画的にされるようになり、報告もよくなった。
5.顧客との打合せが記録をもとに実施され、
信頼感とコミニュケーションが増した。
「同じISOでもこれほど違うのか」と、驚かれています。
本当は、こんなのおかしいですよね?国際規格のISOなのに!
でも、これと似たような事例が山積みなのです。
原因は、結局「ISOが重荷になっていませんか?」に戻りますが、経営者にあるんですね。経営者が管理責任者に【丸投げ】であり、ISOの本質を理解し、自社に合った業務マニュアルにしていないからです。
05/09:反田快舟
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